国際北陸工芸サミット 工芸ハッカソン

開催日:DAY1・DAY2 2017.9.23(土)・24(日)
    DAY3・DAY4 2017.11.18(土)・19 (日)
開催地:富山県高岡市
参加者:37名(応募総数142名)
審査員:石橋 素(エンジニア / アーティスト ライゾマティクス 取締役)、
    林 千晶(ロフトワーク代表取締役)、
    菱川勢一(映像作家 / 写真家 / 演出家 武蔵野美術大学教授)、
    高川昭良(高岡市デザイン・工芸センター 所長)、髙橋正樹(高岡市長)、
    武山良三(富山大学芸術文化学部 学部長) ※敬称略/順不同
賞:最優秀賞1組30万円、特別賞1組10万円
主催:富山県
共催:高岡市
企画・運営:(有)エピファニーワークス
アドバイザー:青木竜太(ヴォロシティ(株)代表取締役社長 )
協力:富山県総合デザインセンター、高岡市デザイン・工芸センター、
   高岡クラフト市場街実行委員会、高岡銅器団地協同組合


ライフスタイルの変化、後継者不足、さまざまな困難に直面する日本の工芸。グローバル資本主義社会に生きる私たちにとって、非効率的な手仕事はもはや失ってもよい不要なものでしょうか? 工芸の「保存」ではなく、活きた産業になり得るのでしょうか? 富山県高岡市には、金属工芸や漆芸の技と心意気を400年以上受け継ぎ、今も奮闘している多くの職人・作家がいます。工芸ハッカソン2017には、富山県内の工芸職人・作家をはじめ、人工知能、AR・VR、ロボティクス、情報技術など最先端テクノロジーの技術者と、ファッション、音楽、メディアアート、イラストレーションなどの分野のクリエーターなど計37名が参加。一連のプロセスを通じて、工芸の価値や課題を改めて探るとともに、日本のクリエイティブにとっても、未来の革新につながるコラボレーションの創出を目指すものとなりました。

 
 

高岡銅器や高岡漆器の工場・工房、高岡の街並みなどを訪れるツアーを実施しました。平和合金での鋳造の見学、モメンタムファクトリー・orii で高岡銅器の伝統的な着色技法を継承しつつ、 独自の発色技法を確立しての新たな色や用途の提案について学び、高岡漆器の技法の一つ「青貝塗(螺鈿)」を継承する武蔵川工房を訪ねてその技を拝見し、シマタニ昇龍工房ではおりんの鍛金技術に触れました。世代を超えて受け継がれてきた技と、新しいものをつくり出している高岡のものづくりのパワーや価値をたくさん感じる1日となりました。

 
 

DAY1の伝統産業ツアーを経て、工芸の魅力については「土着性、技術力、歴史や時間の積み重ね、偶然性(自然や時による変化、人と自然のスピード感、自然素材ならではの魅力・人)、 顔が見える信頼感、人柄、感情やぬくもり、造形としての美しさ、表現、技術、科学の交差点」 といったキーワートドが読み解かれました。これをもとにアイデアを出し合いながら7つのチームが誕生し、9月25日から11月17日の自主活動期間中にはプレゼンテーションに向けてそれぞれアイデアのアウトプット制作に取り組みました。

 
 

約2か月間の自主活動期間を経て、参加者37名が高岡に再集結しました。7チームそれぞれに制作や翌日のプレゼン準備に取り組みました。事前に地元参加の職人たちが鋳造したり漆塗りをしたアウトプットができているチーム、プログラムを実装するチーム、その場で紙で洋服を作るチームまで。カオスの中に、新しいものが生まれそうな予感と熱気に満ちていました。

 
 

関係者や一般の来場の方で大入り満員の会場で、 各チームによるプレゼンテーションと公開審査会が行われました。 白熱したプレゼンテーションと審査を経て結果が発表されました。
特別賞を獲得したのは、「伝統技術の継承」チーム。受賞発表後の審査員の講評では、富山大学芸術文化学部学部長の武山良三氏、高岡市デザイン・工芸センター所長の高川昭良氏が、ぜひ連携していきたいと熱いコメントを寄せてくださいました。
最優秀賞に輝いたのは「9+1」チーム。審査員の1人、映像作家の菱川勢一氏も、「漆という通常工芸で使われる道具が照明として使われているというアイデアのジャンプが突出していた」と絶賛。「伝統を守りながらも、機能を飛び越えていくアイデアが今後求められていくのだろう」とのコメントをいただきました。

最後に、審査員でありロフトワーク代表取締役の林千晶氏が講評で述べてくださったことをご紹介します。
“伝統と最新のテクノロジーを結びつけるという取り組みは各所で実施されており、特に人工知能は必ず出てきます。でも、どれだけ世の中が効率良くなっても、正確になっても、人間の幸せや豊かさは増えるわけではない。そんな事実が研究すればするほど出てきています。今回のハッカソンでも、どのチームも最終的に目指すところが「人が受け取ってよかった」とか「この技術を継いできてよかった」、と人の心に寄ったものになっていましたが、みなさんが時間をかけて考えた結果、そこに至っているというのをみて、やっぱり人間の活動ってすごいなと、改めて発表を見ていて感銘を受けました。特に伝統技術をどう継承していくかということに関していえば、人間の学びはこれから人工知能によって加速するだろうといわれていますが、正確で頻繁なフィードバック、それを人間が手に入れると人間の学びが加速するのであって、人工知能の学びが加速するわけではないのです。ハッカソンでうまれたものがどれだけ形になるのか、一番は参加したみなさんのDNAに残って行くと思います。参加して感じたプロセスが高岡や東京など地域でどう関わって形になっていくかが楽しみです。”