去る2月9日(土)、Re工芸チームが富山大学芸術文化学部主催による特別講演に登壇しました!
《Re工芸》は、工芸ハッカソン2017で生まれた、アーティスト、漆芸職人、原型師、設計士、エンジニアやデザイナーなどからなるチーム。「高岡の工芸が培ってきた技術、歴史、美学をテクノロジーの視点から再構成(Reconstruction)する」という意味合いから、その名を得ています。
今回は、高岡の漆芸職人 京田充弘さん、原型師 嶋光太郎さん、そしてリーダーでアーティストの石橋友也さんの三者が登壇。チーム発足から第一弾の作品「Between#1 #2 #3」、第二弾の作品「Between#4 Black Aura」の誕生に至るまで。具体的な制作工程や、その時々に感じた視点、思考錯誤の過程を織り交ぜた充実の講演となりました。
2017年は、「AIと人の共創によって工芸や造形の制作プロセスを再解釈する」という視点で第一弾「Between#1 #2 #3」を制作したRe工芸チーム。「漆を使う必然性が薄い」という反省点はあったものの、「結果的に、漆の持つ”非現実感”を拡張する試みになった」と石橋さんは振り返ります。
第一弾の写真を見た時の「なんだこれは」という驚きや友人からの「CGみたい」という言葉で気づく、漆の持つバーチャルな質感。作品の制作を通じて知った、気が遠くなるような工程を重ねる漆芸と、そこまでしてまでも輝く漆が求められてきたという歴史。そして得た「時を超越するような”非現実的”な美しさこそ、漆がこれまでの長い歴史の中で人々を魅了してきたのではないか」という気づき。加えて、他のチームの活動に学んだ高岡の工芸の素材や技術に迫るという視点・・・
さまざまな要素や関係が反応しあって第二弾につながっていく過程は、とても興味深いものでした。
「漆という素材がもつ、非現実的で半バーチャルな質感に迫るものを」と、制作に取り組んだ第二弾を経て、「漆とは何なのかということに肉薄でき、Re工芸チームのコンセプトの輪郭もはっきりしてきた」とか。
質疑応答では、「AIと人が共創する中で、人の判断が必ず介在してしまう。技術の落としどころをどこにしているのか」と、実際に人工知能と人の技術の協働の現場におられる方からの質問も。
さらに、伝統工芸の職人の京田さん、嶋さんへ「デジタル技術や工芸ハッカソンのような取り組みに柔軟に対応できるのは、なぜ」という質問には、「自分たち以外からの刺激を受けて作ったことがなかった。このようなチャレンジを繰り返すことは意味があると思い始めている」と嶋さん。京田さんは、「メンバーが優秀で刺激になっている。漆の魅力やその特徴を意識したことはなかったが、ハッカソンに参加することで”漆はなんぞや”と問いかけられて、あらためて意識するようになった」と語ってくれました。
今後は、「第二弾で用いた手法を使って、改めて”用の美”に迫りたい」と石橋さん。半バーチャルで非現実的な美と再解釈されたものの、そもそも実用性のあるものに用いられることが多い、漆。今後、Re工芸チームを通じて、その存在がどのように昇華していくのか。今後の活動にも期待が高まります。
ご参加いただいた皆さん、どうもありがとうございました。
Photo by : 有田 行男